2022年06月05日

証券会社の売買システム1 ナンピン


 個別株投資では、ファンダメンタルやテクニカルより
総資産に占める現物株の保有比率管理が最も重要である
ことを前回説明したが、ファンダメンタルやテクニカル
へ入る前にまだ説明できることがある。
 それが証券会社の売買システムを把握するということ
になる。現物株の保有比率管理を実施するうえで重要な
売買システムを3つ説明していく。今回説明する1つ目は
ナンピンである。

■取得単価を下げる方向への平均化

 ナンピンとは取得単価を下げる方向への平均化のこと
を言う。現物株は、異なるタイミングで同一株を複数回
購入した場合、別々に管理されるのではなく、取得単価
が平均化された状態で管理されることとなる。
 つまり、購入毎の

取得単価:a1,a2,…,an
数量  :x1,x2,…,xn


とすると、通算の取得単価は

(a1x1+a2x2+…+anxn)/(x1+x2+…+xn)

となる。厳密には手数料も加味されるが、ここでは省略
する。
 たとえば、ある同一株を500円で100株、400円で100株
と複数回に分けて購入した場合、

(500*100+400*100)/(100+100)=450

となるため、450円で200株保有している扱いとなる。

■ナンピンのメリットとデメリット

 ある株をナンピンして取得単価が下がれば、確定損失
を出さずに売り抜けるために初回購入時の取得単価まで
株価が回復するのを待たずとも、平均化された取得単価
までの回復で済むということになる。
 また、株価が大きく回復すれば、数量が多い分利益も
大きくなるということになる。これらがメリットとなる
が、ナンピン後に株価が回復せずさらに下がると、含み
損が上乗せされて拡大するというデメリットもある。

 そのデメリットの影響を小さくする方法が、前回説明
したとおり、何回までのナンピンを想定しておくのかと
いうことと、段階的に購入する数量を増やすため初回の
購入は極めて小さい額にするということとなる。
 前回の例を挙げると、総資産占める現物株の保有比率
を50%と決定し、その50%を4回に分けて1:2:3:4の割合で
購入していくことを想定すれば、初回の購入額はさらに
1/10のわずか5%となる。

■売り抜け時も時間分散売り

 買いをナンピンしながら時間分散買いしたのであれば、
売りも時間分散売りする。4回に分けて1:2:3:4の割合で
順に購入したのであれば、4回に分けて1:2:3:4の割合で
順に売却するのである。
 また、それは株価が回復しているときに含み損を脱却
していようがいまいが同様である。これらを理解してい
ないと、下記に挙げるような行動をとることになりかね
ない。

a)株価が取得単価まで回復すればすべて売却する
b)株価が取得単価まで回復しなければすべて売却しない

 a)を実施すれば、薄利撤退で手数料を証券会社に払い、
時間を浪費するというだけの結果となる。b)を実施すれ
ば、最後に購入時の株価を下回らない限りナンピンする
わけにもいかず、こう着状態が長く続く結果となる。
 含み損を脱却しないうちから時間分散売りを開始した
としても、少なくとも最後に購入時の株価より高い株価
で売却できているのである。損切りになることは事実で
あるが、それは表面上の結果にすぎない。

 その後、再び株価が下がり、かつ含み損を抱えている
状態であれば、先ほどの売却時と同様の数量を購入する。
ここでは最低限、その売却時の株価を下回る株価でさえ
購入できればよい。
 このように、含み損の有無に関わらず時間分散売りで
こまめに売却し、分母としての数量を減らしておけば、
再び株価が下がったときにナンピン効果は高くなるため、
その後はそれまでより優位な売買ができるようになる。

■投資期間に応じた時間分散間隔

 購入した株が含み損を抱えたら損切りせずにナンピン
するという手法を選択するということは、基本的に投資
期間は中長期となる。また、前回の説明も考慮に入れれ
ば短期投資の失敗分もこれに含まれることになる。
 投資期間が中長期であるならば、時間分散間隔も同様
に中長期であるという点を注意する必要がある。これを
短期に設定してナンピンしてしまうと即座に資金が枯渇
し、かつ含み損が拡大し続けることになりかねない。

 テクニカルを使わず、これを計画だけで実施するので
あれば、定点観測が基本となる。たとえば、四半期毎に
確認すると決定し、そのときの含み損がx%以上であれば
購入、そうでなければ見送り、という具合である。
 ただし、この方法では中途半端な位置での購入が多く
なる。明白な下降トレンドが発生し、底値圏で購入する
機会があっても、定点でなければ見送るしかないためで
ある。

 そのような下降トレンドが発生したとき、テクニカル
との組み合わせで底値圏で購入できる可能性のある売買
システムがあるため、次回説明する予定である。
posted by iceage at 20:59| Comment(0) | 投資理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月05日

現物株投資で最も重要な保有比率管理2


 以前、総資産に占める現物株の保有比率管理を徹底す
れば理論上は資産が増加していくが、現実には売買する
数量は非常に小さくなるため、ほぼバイアンドホールド
する投資家向けの運用になってしまうことを説明した。
 そのままの運用でも、現物株による配当、労働などで
得た収入の口座への入金で保有比率が下がるため、購入
できる数量を多少増やすことはできるが、もう少し資産
の増加を加速させる方法を考える。

■底値圏買いへの挑戦と時間分散買い

 前回説明した、総資産に占める現物株の保有比率管理
で具体的にやるべきことは、

1)総資産(証券口座での残高)を把握する
2)現物株の保有比率を決定する(50%のとき売買額が最大化)
3)決定した保有比率になるように現物株を購入する
4)いかなる価格変動でもその保有比率を厳守する

となるが、初めて証券口座を開設したからといって2)で
たとえば50%と決めて3)を1回でいきなり実施する必要は
ないのである。確かに、仮に株式相場の天井圏でこれを
実施したとしても、4)を実施すれば理論上は問題ない。
 どうせ問題ないのであれば、資産の増加を有利にする
ためにも、株式相場の底値圏での購入を試してみるので
ある。また、最初から底値圏を当てられるとは限らない
ことまで事前に想定し、複数回に分けて購入していく。

■短期、中期売買

 たとえば、4回に分けて購入し、2回目以降の購入時に
数量を増やすことを考え、50%を1:2:3:4に分けるという
具合に計画を立てる。1回目の購入額は50%のさらに1/10
の5%ということになる。
 1回目から底値圏を当て、上昇トレンドに乗って含み
益となれば売却する。半年または1年で得られる配当と、
購入から売却までの期間で得られる売買差益との比較で
あり、後者のほうが効率がよい場合が多いためである。

 1回目で底値圏を当てられず、さらに株価が下がった
場合は2回目の購入を実施する。そこからの対応は1回目
と同様であり、上がれば売却、下がれば3回目の購入の
実施となる。
 つまり、当初の保有比率50%という目標に到達しなく
ても、その手前の短期、中期売買で完結できてしまうの
であれば、延々とそれを繰り返して利益を上げるほうが
効率がよい。

■保有比率は疑似的かつ一時的な目標

 上記を繰り返していく中で、やがて売却し切れず残る
株も発生してくる。いわゆる塩漬け株であるが、たとえ
それで目標の保有比率を達成したとしても、4)さえ実施
すれば、何度も言うように理論上は問題ないのである。
 そして、株式相場の低迷、塩漬け株による配当、口座
への入金で購入余地ができるため、塩漬け株といえども
やがては売却できる日が来るのである。そうすれば再び
購入余地が復活するため、3)へ移行すればよい。

 とは言え、塩漬け株だけで保有比率を構成していくの
はどこか心もとない。そこで、過去に配当や売買差益で
利益確定した総額、つまり現在の総資産と元本(入金額)
の差額の部分を保有比率の構成に組み込むのである。
 その額の範囲内に限って購入すれば、仮に上場廃止や
倒産になったとしても利益確定総額はマイナスにはなら
ないし、含み損を気にする必要もない。ここの構成には
有利子負債のない企業の株やREIT ETFを使うとよい。

■まとめ

・ 総資産に占める現物株の保有比率管理は、1)〜4)を
 そのまま実行すれば理論上は問題ないが、売買機会が
 ほとんど訪れないため、非常に時間がかかる。

・ 3)は必ずしも1回でいきなり実行する必要はない。
 どうせならここで底値圏買いへの挑戦と時間分散買い
 を実行してみる。

・ 上記がうまくいくなら含み益になった株は売却する。
 うまくいく限り、3)の目標はいったん置いといて延々
 と繰り返せばよい。

・ 上記がいずれうまくいかなかった場合に通常ペース
 である3)→4)へ移行すればよい。4)の状態で停滞して
 も、いずれ再び3)へ戻ることは可能である。

 これまでの内容を見てわかるとおり、いまだファンダ
メンタルやテクニカルについて触れず、計画を立てたと
いうだけである。それでも、儲けるための仕組みは知恵
を絞って考えるというだけで作成できるものである。
 ただし、この計画もまだ説明していない部分に関して
落とし穴がある。その穴をふさぎ、これを問題なく実行
するためにファンダメンタルやテクニカルといった手法
が必要となってくるのである。

 次回はファンダメンタルやテクニカルへ入る前に証券
会社の売買システムについて説明する予定である。
posted by iceage at 17:45| Comment(0) | 投資理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月30日

現物株投資で最も重要な保有比率管理


 個別株投資では、ファンダメンタル重視かテクニカル
重視かという二元論になりがちであるが、それらよりも
総資産に占める現物株の保有比率管理が最も重要である
というのが管理者の持論である。
 また、ファンダメンタルとテクニカルのどちらか一方
ということもなく両方とも同レベルで重要視し、大前提
としての現物株の保有比率管理をより有効活用するため
の手段として用いるものであると考えている。

■やるべきことは単純

 総資産に占める現物株の保有比率管理で具体的にやる
べきことは、

1)総資産(証券口座での残高)を把握する
2)現物株の保有比率を決定する
3)決定した保有比率になるように現物株を購入する
4)いかなる価格変動でもその保有比率を厳守する

だけである。これだけで資産は増加していく。
 株価が上がれば保有比率も上がるので、決定した保有
比率に合わせるように株を売却することになり、下がれ
ばその逆である。また、保有比率を厳守すれば、過剰に
購入することも売却することもないわけである。

■現実の運用

 理論上は、総資産に占める現物株の保有比率を決定し
てそれを維持管理するだけで資産が増加していくことは
わかるが、現実の運用がどうなるかはシミュレーション
する必要がある。
 保有比率が下がったときに元の保有比率に戻すための
株の購入額は、下記の式で表すことができる。なぜ下記
の式になるのかはここでは省略する。

変化前総資産 * 保有比率 * (1-保有比率) * 変化後減少率

 ここで、

変化前総資産 = 1,000,000円
変化後減少率 = 0.1(=10%)

とし、保有比率*(1-保有比率)から、購入額が最大値と
なるように

保有比率 = 0.5(=50%)

として計算すると、25,000円が購入額となる。

 500,000円分の株が10%の含み損を抱えても、追加購入
できるのが25,000円しかないのだから、ほぼバイアンド
ホールドしかしないような長期投資家向けの運用となる
結果となった。
 また、25,000円では個別株は低位株、ボロ株しか購入
できず、あとは単元数の小さいETFを購入するしかない。
変化前総資産を10倍の10,000,000円に設定してようやく
ふつうの株を最小単元購入できるような状態である。

 ←     現金1,000,000円      →
|----------------------------------------|
                      ↓保有比率50%
 ← 株500,000円  →← 現金500,000円 →
|++++++++++++++++++++--------------------|
                      ↓10%の含み損
 ← 株450,000円 → ← 現金500,000円 →
|++++++++++++++++++ --------------------|
                      ↓25,000円分の株購入
 ← 株475,000円 → ← 現金475,000円 →
|+++++++++++++++++++ -------------------|


■対策

 現実は、総資産に占める現物株の保有比率を決定して
それを維持管理するだけでは、よほど資産を持っている
長期投資家でなければ厳しい結果となった。そうでない
投資家は対策をとる必要がある。
 それは、現金の入金を増やすしかない。現物株による
配当だけでなく、労働などで得た収入の口座への入金、
決定した保有比率以外の現金で実施した短期投資、中期
投資による売買差益である。

 また、初めて証券口座を開設して上記の3)を実施する
場合、0%から決定した保有比率にいきなり合わせるわけ
ではない。そこでファンダメンタルもテクニカルも見て
少しでも安いとき、安いところで購入するのである。
 次回は3)を実施するまでの過程について説明する予定
である。
posted by iceage at 18:32| Comment(0) | 投資理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする