個別株投資では、ファンダメンタルやテクニカルより
総資産に占める現物株の保有比率管理が最も重要である
ことを前回説明したが、ファンダメンタルやテクニカル
へ入る前にまだ説明できることがある。
それが証券会社の売買システムを把握するということ
になる。現物株の保有比率管理を実施するうえで重要な
売買システムを3つ説明していく。今回説明する1つ目は
ナンピンである。
■取得単価を下げる方向への平均化
ナンピンとは取得単価を下げる方向への平均化のこと
を言う。現物株は、異なるタイミングで同一株を複数回
購入した場合、別々に管理されるのではなく、取得単価
が平均化された状態で管理されることとなる。
つまり、購入毎の
取得単価:a1,a2,…,an
数量 :x1,x2,…,xn
とすると、通算の取得単価は
(a1x1+a2x2+…+anxn)/(x1+x2+…+xn)
となる。厳密には手数料も加味されるが、ここでは省略
する。
たとえば、ある同一株を500円で100株、400円で100株
と複数回に分けて購入した場合、
(500*100+400*100)/(100+100)=450
となるため、450円で200株保有している扱いとなる。
■ナンピンのメリットとデメリット
ある株をナンピンして取得単価が下がれば、確定損失
を出さずに売り抜けるために初回購入時の取得単価まで
株価が回復するのを待たずとも、平均化された取得単価
までの回復で済むということになる。
また、株価が大きく回復すれば、数量が多い分利益も
大きくなるということになる。これらがメリットとなる
が、ナンピン後に株価が回復せずさらに下がると、含み
損が上乗せされて拡大するというデメリットもある。
そのデメリットの影響を小さくする方法が、前回説明
したとおり、何回までのナンピンを想定しておくのかと
いうことと、段階的に購入する数量を増やすため初回の
購入は極めて小さい額にするということとなる。
前回の例を挙げると、総資産占める現物株の保有比率
を50%と決定し、その50%を4回に分けて1:2:3:4の割合で
購入していくことを想定すれば、初回の購入額はさらに
1/10のわずか5%となる。
■売り抜け時も時間分散売り
買いをナンピンしながら時間分散買いしたのであれば、
売りも時間分散売りする。4回に分けて1:2:3:4の割合で
順に購入したのであれば、4回に分けて1:2:3:4の割合で
順に売却するのである。
また、それは株価が回復しているときに含み損を脱却
していようがいまいが同様である。これらを理解してい
ないと、下記に挙げるような行動をとることになりかね
ない。
a)株価が取得単価まで回復すればすべて売却する
b)株価が取得単価まで回復しなければすべて売却しない
a)を実施すれば、薄利撤退で手数料を証券会社に払い、
時間を浪費するというだけの結果となる。b)を実施すれ
ば、最後に購入時の株価を下回らない限りナンピンする
わけにもいかず、こう着状態が長く続く結果となる。
含み損を脱却しないうちから時間分散売りを開始した
としても、少なくとも最後に購入時の株価より高い株価
で売却できているのである。損切りになることは事実で
あるが、それは表面上の結果にすぎない。
その後、再び株価が下がり、かつ含み損を抱えている
状態であれば、先ほどの売却時と同様の数量を購入する。
ここでは最低限、その売却時の株価を下回る株価でさえ
購入できればよい。
このように、含み損の有無に関わらず時間分散売りで
こまめに売却し、分母としての数量を減らしておけば、
再び株価が下がったときにナンピン効果は高くなるため、
その後はそれまでより優位な売買ができるようになる。
■投資期間に応じた時間分散間隔
購入した株が含み損を抱えたら損切りせずにナンピン
するという手法を選択するということは、基本的に投資
期間は中長期となる。また、前回の説明も考慮に入れれ
ば短期投資の失敗分もこれに含まれることになる。
投資期間が中長期であるならば、時間分散間隔も同様
に中長期であるという点を注意する必要がある。これを
短期に設定してナンピンしてしまうと即座に資金が枯渇
し、かつ含み損が拡大し続けることになりかねない。
テクニカルを使わず、これを計画だけで実施するので
あれば、定点観測が基本となる。たとえば、四半期毎に
確認すると決定し、そのときの含み損がx%以上であれば
購入、そうでなければ見送り、という具合である。
ただし、この方法では中途半端な位置での購入が多く
なる。明白な下降トレンドが発生し、底値圏で購入する
機会があっても、定点でなければ見送るしかないためで
ある。
そのような下降トレンドが発生したとき、テクニカル
との組み合わせで底値圏で購入できる可能性のある売買
システムがあるため、次回説明する予定である。